点群データの作成と活用

1.点群データとは

 点群データとは、xyz座標で表される位置情報と、RGBで表される色情報の6つの数字で表される「点」情報の集合体です。物や地表に沿ってこの点群データを計測することで色と形を記録し、コンピューター上に3次元で再現することができます。細かな点なので、画面では写真のように見えますが、点の集合(図1)で、マウスの操作で自在な角度から見ることができます。

点群データ

 

2.地質調査と地形

 地質調査の目的は、対象となる範囲の地質を推定することですが、ボーリングでは、その地点の情報しか分かりません。ボーリングで得られた情報と、周辺の地形を組み合わせ、どのようにこの地盤が作られたのか地史を考える事によって、ボーリングの情報を3次元に拡張することができます。 また、地質調査は、過去から現在、あるいは将来の地盤の変形や崩壊、を解明・予想、つまり地盤の状態を4 次元的に考える技術でもあります。定期的に地形データを入手し比較することで、経時的な地質の変化あるいは災害による変化を把握する事ができます。地質技術者は、地面の下ばかり見ているように思われがちですが、遠い山の形から、昔の川の流れを考え、地盤の状態を考えます。

 

3.点群データの技術

 点群データの利用は、古くからありましたが、計測機器が高価なこと、扱うのに高性能のコンピューターが必要なことから、あまり一般的ではありませんでした。近年、計測機器の価格が下がり、コンピューターの性能が飛躍的に改善されたことから、徐々に、利用が広まっています。簡単に点群に係わる技術を紹介します。

①LiDAR:
 「Light Detection And Ranging(光検出と測距)」の略。レーザースキャンとほぼ同義です。レーザーの飛ばす方向・角度とレーザー計測した距離より、点の位置情報を取得します。同時に写真を撮影して色情報を作成し、位置情報と合わせ点群データを記録します。

②写真点群作成:
 撮影位置を変えた複数の写真を重ね併せ、見る角度で変わる対象のズレにより、点の位置を計算し点群を作成します。昔は測量技術者が、2枚の空中写真を見比べ地図を作成していましたが、今は、規格にあった写真がそろえば、コンピューターで簡単に作成できます。

③SLAM:
 「Simultaneous Localization and Mapping(自己位置推定と環境地図作成の同時実行)」の略。周囲の形状や色等を画像やレーザー等で計測しその情報で自己の位置・姿勢等を判断しこれを移動しながら連続的に行うことで、移動範囲の全体の色や形状によって構成される=環境地図を作成する技術です。最新型のiPhone にも搭載されています。

④グランドデータ:
 レーザースキャナでは木や草もすべて計測対象とし、地形だけを測量してくれません。一定の範囲でレーザーが飛んだ最も低い点を地表の上の点と見なし、これを集めて作成された点群データをグランドデータと言います。地質調査に必要なのはこのグランドデータです。

レーザースキャナ BLK-360G1

 

5.点群データ作成用例

①崩壊斜面の計測
 斜面崩壊が発生した場合は、まず2 次災害の可能性を予想し、対策の見通しを早急に立てる必要があります。なによりスピードが優先され、情報を即時収集・分析し、必要最小限のデータをアウトプットすることが求められます。当社は、ある現場にて発生した斜面崩壊に際し、タブレット端末搭載のLiDAR SLAMを利用して対応しました。崩壊範囲を踏査しながら、携帯端末により外周をスキャンすることで、崩壊の範囲を記録しました。記録したデータを静岡県公表の点群データと重ね崩壊範囲を特定、図化し、資料を作成しました

○○○技術

②地盤の経時的変化の記録
 斜面変動や地盤の沈下など、今まで観測機材や移動杭の測量等、「点」の移動を計測していましたが、レーザースキャンによる計測で、「面」の変形を計測できるようになりました。
 ただし、レーザースキャナによる計測の精度は数cmオーダーであり、専用観測機器やトータルステーションによる計測には敵いません。急速に変位が累積する箇所、あるいは長期的な観測に向いています。

③変状の記載
 地盤の変形に伴う、構造物の変状は、これまで、写真やスケッチで記載していました。タブレット端末により、変状のスキャンをすることによって、変状の位置・規模を3次元的にスピーディーに記録できるようになりました。